萌々香　おまえは
真夏の太陽だ（ごめんね萌々香、こんな陳腐な比喩しか使えなくて）
太陽が燦々とふりそそぐ白い砂浜だ
その白い砂浜に
風に飛ばされないようにしっかりと据えられたビーチパラソルだ

萌々香　おまえは
あのビーチパラソルのようにあかるくて
ささやかだが、そこに憩いの場所を提供してくれる

萌々香　おまえに
この夏は会えなくて
ジイジはいまひとり、ぽつんと
ひとつ、仕舞い忘られたように置かれてある
ビーチパラソルを眺めながらおまえのことを思っている

萌々香　おまえに
この詩を捧げる　けっして詩とはいえないこの作文に託して
おまえに言っておきたいことがある

萌々香　ジイジは
この歳になってやっと知りました　たとえば

あの、ビーチパラソルに彩られた色のどの色にだってなれるということを
ただ染まるだけというのではなく、人は、なりたいものになれるということを
なれなかったのはただなろうとしなかったからだ、ということを

萌々香　ジイジは
この夏お前に会えなかったのは幸いでした　もしも

この夏、おまえに会っていたらこのお手紙は書かなかっただろうから

でも、ビーチパラソルはひときわ萌々香のようにあかるくて　ジイジはひとり
仕舞い忘られたビーチパラソルのように、ぽつんと海を眺めています